笑っていたい、君がいるこの世界で

 やっぱり神谷さんは、坂木くんのことが好きなのかな。だって、この一週間で二回もスマートな助け舟を出してくれたんだ。好きになるには十分だ。
「いい人だよね、あの人」
 神谷さんがそう言って確信した私は、「うん」とうなずく。そして、ふたりを想像で横並びにしてみた。美男美女で、とてもお似合いだ。
「いい人だから、嫌われ者の私にも声をかけてくれて、そのせいで悪く言われてないか心配」
「え……?」
「前も言ったでしょ? 私、みんなからあんまりいいふうに言われてないから」
 神谷さんの横顔を見ると、やはり表情を変えずに淡々と話している。私は肯定も否定もできなくて、バッグを持つ手にぎゅっと力をこめた。
 私とは全然違うタイプなのに、神谷さんも同じようなことで悩むんだな。
 いや……違うか。神谷さんは、相手に嫌な思いをさせたくない。私は、自分が嫌な思いをしたくない。……全然違う。
「もしかしたら、紺野さんも友達から聞いたんじゃない? 私に関するいろいろな噂とか陰口とか」
「私、友達いないから……」