「わ……私、実は、引きこもりになった原因、みんなの前で吐いてしまったからなんだ」
 話しだすと、姿勢を整えた坂木くんが、「……うん」と相槌を打った。
「きっかけはそれだけのことだったんだけど、だんだん……休んだこと自体が引け目になって、休めば休むほど学校に行きづらくなって……」
「うん」
「友達だと思ってた子たちからも見放されて、どうせ学校に行ってもひとりぼっちだし、白い目で見られるしと思ったら……学校がどんどん怖くなって」
 気付けば私は、坂木くんにポロポロと本音をこぼしていた。止まらなくなって、うつむいたまま続ける。
「後悔なら……いくらでもしたんだ。吐いた日、朝から体調が悪かったんだから、その日だけ学校を休めばよかったとか、廊下に吐くくらいなら、教室の隅でバッグの中に吐いたほうがまだマシだったとか、そんなことがあっても、翌日か翌々日には学校に行けばよかったとか」
 こちらを向いて座っている坂木くんが、前のめりに身をかがめながら手を組んでいるのが見える。ちゃんと私の言葉を聞こうとしてくれているのが伝わってくる。