覗きこまれるようにそう言われて顔を上げた私は、フリーズする。
 ……えっ?
 目に映ったのは、整った顔の男の子。髪がサラサラで、爽やかさを体現したかのような、一七〇センチほどのイケメンだ。
「あ、あ……あ……」
 私は、目玉が飛び出さんばかりに目を見開き、口を手で覆った。信じられない現実が、今目の前で起こっている。
 アラタだ。さっきアプリで見たアラタと瓜ふたつの顔だ。
「先生に言おうか?」
 リアルアラタが、こちらに向かって話しかけている。私は、それが自分にかけられた言葉だと信じきれなくて、きょろきょろと周りを見回した。
「いや、キミに言ってるんだけど」
 そう言って、私を指差す彼。〝キミ〟なんて現実世界で言う男の子、実在するんだ。
「だ……大丈夫です」
 久しぶりにお母さん以外と話す声は、小さいうえに上ずっている。目も合わせられない。
「ホント? 無理してない?」
 私は返事をする代わりに、ぶんぶんと首を横へ振った。
「なら、いいけど。本当にキツイときは言ってよ?」
 そして、彼はすっとうしろへ下がった。
「…………」