「吉乃しゃま! 今日も大変、美しゅうございます!」


帝都の冬は、現世と同じくよく冷える。暦では十二月の中旬を迎えた頃だ。

吉乃が紅天楼に来てから、あっという間に半月が経った。

二カ月半後、吉乃は十八回目の誕生日を迎える。

帝都吉原では人の女は十八にならないと客をとれないため、吉乃はそれまでの期間で鈴音や白雪、クモ婆から遊女の仕事に関することや振る舞いに作法、帝都の常識などを徹底的に仕込まれることになった。


「吉乃しゃまは本当に、天女のようなお方でございます~!」

「絹ちゃん、木綿くん、それはかなり言いすぎだよ……」


惚れ涙の一件以来、双子の子猫の妖・絹と木綿は、仕事の暇を見つけては、吉乃の顔を覗きに来るようになっていた。


「ふふっ。私もふたりが惚れ涙を飲むところ、見たかったなぁ。こんなに骨抜きになるなんて、本当にすごい力だよね!」


そう言って笑うのは、白雪だ。

白雪は吉乃よりも妓楼歴が長いため、絹と木綿の吉乃への懐きように、最初はとても驚いていた。


「吉乃ちゃんは、今日は確か、クモ婆から将棋の打ち方を習っていたんだよね?」

「うん……。昨日は囲碁で、一昨日は琴を習ったよ」


今は午前中の稽古を終え、ようやく一息ついたところ。

昼休憩時にはこうして絹や木綿、白雪と話をすることが吉乃の日課になりつつあった。