「白雪を呼ぶより、私が来てしまった方が早かったのよ」

「そうなんですね……」

「それで白雪。今言った通り、この子は今日からあんたと同室になる吉乃だよ。吉乃も私が面倒を見ることになったから、私がいないときは、ここでのことを色々と教えてやって」


白雪と呼ばれた女の子は、鈴音越しに吉乃を見ると、ふわりと花が開いたような笑みを浮かべた。


「吉乃ちゃん? 白雪です。これからどうぞよろしくね」

「あ……は、はい。こちらこそ、どうぞよろしくお願いします」


恐縮しながら頭を下げれば、白雪は「そんなに畏まらなくても大丈夫だよ」と、人懐っこい返事をくれる。


「とりあえず、吉乃は身なりを整えなさい。白雪、私は部屋に戻るから、あとのことはよろしくね」


そうして鈴音は白雪に吉乃の世話を言いつけると、踵を返して行ってしまった。

(鈴音さん、白雪さんのことはすごく信頼している感じだなぁ)

去っていく鈴音の後ろ姿を見送ったあと、吉乃がチラリと白雪を見れば、白雪は未だに鈴音が消えた廊下の先を見つめていた。