「とはいえ、選ばれる女は、ほんのひと握りだろう?」

「当然さ。俺たち、人ならざる者には選ぶ権利があるからな。花嫁にするのは人の女なら、誰でもいいってわけじゃない」


帝都吉原は現世政府と帝都政府の公認で創られた、人ならざる者が人の女と触れ合える唯一の場所だ。

未だに理屈は解明されていないが、人ならざる者の男は人の女を生涯の伴侶として迎えることで、強大な力を得られると言われている。

そのため、帝都に住む人ならざる者たちの多くは、花嫁を見つけるために帝都吉原に通い詰めた。

ただし、花嫁にするのは誰でもいいというわけではないらしい。

魂が清らかで、なおかつ波長の合う相手こそが〝最愛の花嫁〟として見初(みそ)められ、大金を積まれて買われていった。

反対に魂が(けが)れていたり、誰とも波長が合わない女は人ならざる者に魂を喰われ続け、次第に心が弱って、いずれ身が朽ち果てるというわけだ。

魂の善し悪しや相性は、人ならざる者にしか判別ができない。

だから帝都吉原の遊女たちの多くは言葉の通り、花嫁探しという名目で、彼らの喰いものにされていた。