「でかした、琥珀!」

「これで本当に、惚れ涙とやらを試せるの?」


鈴音の疑問に答えたのは琥珀だ。

琥珀はどこからか取り出した湯呑みに片方の小瓶に入った涙をたらすと、それを絹と木綿の前に差し出した。


「さて、ふたりで分けて飲んでごらん」


湯呑みの中には淹れたての緑茶。その緑茶には吉乃の惚れ涙が一滴、混ぜられている。


「いただきます!」


ふたりは元気よく手を合わせると、まずは絹が一口。

そのあと木綿が一口、惚れ涙入り緑茶を口にした。


「「ふわぁぁああ!」」


と、次の瞬間、突然ふたりの身体が薄紅色の光に包まれた。

ふたりは光が消えるまで固まってしまい、ピクリとも動かなかった。


「絹、木綿? 大丈夫かい?」


恐る恐る声をかけたのは琥珀だ。

すると絹と木綿は、同時にカッ!と両目を見開いたかと思ったら、上司の琥珀ではなく吉乃へと真っすぐに目を向けた。


「よよよ、吉乃しゃまっ!」

「へ?」

「ワチキと!」

「オイラは!」

「「一生、吉乃しゃまについてゆきます!!」」


息をぴったりと合わせたふたりはそう言うと、吉乃に勢い良く飛びついた。


「わわっ」


どうにかふたりを受け止めた吉乃は、危うくまた後ろにひっくり返りそうになった。