「吉乃さん、彼女が今お話しした鈴音さんです。重ねての紹介となりますが、鈴音さんは紅天楼のお職・花魁を務めております」
対して、琥珀は極めて冷静に話を続ける。
説明を受けた吉乃は慌てて姿勢を正して鈴音に向き直った。
この絶世の美女が紅天楼の遊女の頂点に立つ花魁なのだ。
(私と同じ人とは思えないくらい、すごく綺麗な人……)
あまりに人離れした美しさなので、うっかりすると鈴音も人ならざる者だと言われても違和感はない。
「そして鈴音さん、こちらは今日からうちで預かることになった吉乃さんです」
「吉乃です。どうぞよろしくお願いします!」
琥珀に紹介された吉乃は深々と頭を下げた。
しかし鈴音の目は相変わらず冷たくて、とても吉乃を歓迎しているようには見えなかった。
「それで鈴音さん、実は折り入ってお願いがあるんですが」
しかし、この機を逃すまいと琥珀は本題を切り出す。
「鈴音さんに、こちらにいる吉乃さんの面倒を見てほしいのです」
琥珀のお願いに、吉乃は心の中で、思わず「えっ」と声を上げた。
まさか鈴音に自分の面倒を見てもらうだなんて、予想外もいいところ。
「あ、あの、私は……」
「嫌よ。既に妹分を抱えている私が、どうしてこの子の面倒まで見なくてはいけないの?」
と、再び口を開いた鈴音は、琥珀のお願いを一蹴した。