「昼間に営業している見世もあるんですか?」
「ええ、ありますよ。中見世と小見世、切見世のほとんどは夜見世だけでなく昼見世もやっております」
吉乃は養父母から、帝都吉原についてのことを、それなりに聞かされてきたはずだった。
けれど遊女の見世への配属理由といい、現世で教えられたことなど大して参考にならないのだと改めて痛感する。
「遊女の年季は十八から二十八の誕生日を迎えるまでの十年間です。吉乃さんは三カ月後に十八歳になられるということなので、その間に、見世に出るために必要な知識や芸事を一通り学んでいただきます」
ドキリと吉乃の胸の鼓動が跳ねた。
見世に出るということはつまり、遊女として客をとるということだ。
「まぁ何事も百聞は一見にしかずと言いますし、遊女としての振る舞いや仕事内容は、うちに所属している遊女の皆さんを見て実際に学ぶことが一番身になるかと思います」
と、そこまで言うと琥珀は、不意に着物の袖から紐のついた小さな鈴を取り出した。
「絹、木綿、ここへおいで」
そして、それをチリンチリンと揺らして鳴らす。
すると次の瞬間、ドロン!という効果音と白い煙と共に、猫の耳と尻尾が生えた小さな童たちが現れた。