「では、まずはここでの生活と、これからのことについてお話をしましょうか」


帝都吉原一の大見世・紅天楼は木造四階建てで、長い歴史を感じさせる重厚な造りをしていた。

建物内も外観に違わず純和風の趣がある。

歩くと僅かに床鳴りがする廊下は懐かしさを感じさせるが、どこもかしこも掃除が行き届いており埃ひとつ落ちていなかった。


「まず、基本的なところですが、吉乃さんはこれからうちで、遊女になるための基本を学んでいただきます」

「遊女になるための基本、ですか」

「はい。ちなみに営業時間についてですが、うちは昼見世はやっていないので、夜見世のみの対応になると覚えていてくださいね」


楼主の琥珀が吉乃を案内した部屋は、建物内の一階にある八畳の和室だ。