「もちろん、下級遊女屋の遊女を花嫁として身請けする者もいるので、一概にこうとは言えないのですが」
曖昧な笑みを見せた琥珀は、またゆらゆらと尻尾を揺らした。
吉乃は自分から質問をしておいて、なんと返事をしたらいいのかわからなくなった。
「でも、吉乃さんはどちらにせよ、大見世の所属になっていたと思いますよ」
「え……」
「もしかしたら咲耶様からもお話があったかもしれませんが、異能持ちの遊女ともなれば、高貴なご身分であられる人ならざる者は、こぞって興味を示すはずですから。彼らは強大な力を得るため、花嫁探しに必死です。手にある富を最大限に使って、あなたの元へと通い詰めることでしょう」
そう言った琥珀は、ニヤリと笑って着物の袖に手を入れた。
「実に、有り難いことです。皆さま、花嫁を手に入れるためなら惜しむことなく、見世に大金を落としていってくれるのですから」
「こ、琥珀さん?」
「え? あ、ああ、すみません。つい、悪い癖で……」
「悪い癖?」
「お金のことになると、ちょっと裏の顔が出てしまうんです。ほら、お金はないと困りますけど、あって困ることはありませんからね」
琥珀は爽やかに笑って言ったが、瞳には〝銭〟の字が浮かんでいた。
(琥珀さんの楼主らしい一面を見てしまったかもしれない……)