「花嫁を探しに来る人ならざる者は、より強い力や権力を求める、野心に満ちた者たちなのです。彼らはここで、遊女たちと話をしたり夜を共にしたりして、魂の味見をすることで、自分と遊女の波長が合うかどうかを確認します」
魂の味見――。それは、〝口付け〟で行われることが多いと聞く。
自分が人ならざる者と唇を重ねることを想像した吉乃の顔は、あからさまに曇った。
「つまりですね。ここでは容姿が優れていることよりも、魂が美しいことの方が重要視されるわけです」
「魂が美しい?」
「ええ。美しく、清らかな魂を持つ女性を伴侶に迎えるほど、人ならざる者の力を高める。だから魂が穢れていたり、弱っている場合は価値がないと判断されてしまうのです。酷な話ではありますが、そうして最初に選り分けることで、花嫁探しをしやすくしているのですよ」
そう言った琥珀は、眉を八の字に下げて笑った。
「では……小見世や切見世行きになった遊女は、花嫁に選ばれる可能性はないということですか?」
「そうですね。難しいかと思われます。そもそも下級遊女屋に訪れる人ならざる者は富を持たない者が多いので、彼らはどちらかというと花嫁探しよりも、〝己の欲求を満たすために人の女の魂を食べに来ている〟と言った方がいいかもしれません」
吉乃は思わずゾッと背筋を凍らせた。
人の女は魂を喰われ続けることで、身が滅んでしまうのだ。
つまり、継続して魂を食べられるほど、寿命が縮む。
吉乃はまさか所属する見世の差で、ここまで遊女の運命が変わってくるとは知らなかった。