「遊女の案内所には、私より綺麗で器量良しの子たちがたくさんいましたし」
「ふむ。では、その方たちは皆、他の大見世行きが決まりましたか?」
「い、いえ。私の前に、大変綺麗な子がいたのですが、その子は大蜘蛛に小見世行きを言い渡されていました」
あのとき吉乃は、とても不思議に思ったのだ。
けれど考えても答えが見つからず、自分の身体検査の順番がまわってきてしまった。
「私よりも余程、あの子の方が紅天楼に相応しいのでは……」
「なるほど。でも、これまで大蜘蛛の采配が間違っていたことはありません。その方はきっと、〝魂〟に問題があったのでしょうね」
「魂に問題が?」
「はい。吉乃さんも既にご存じかとは思いますが、ここ、帝都吉原は僕たち人ならざる者が、花嫁探しに訪れる場所なのです」
それはもちろん吉乃だけでなく、帝都吉原に売られてきた女ならば、誰もが承知していることだ。