琥珀はきっと、親切心で言ってくれているのだろう。
でも、どのような事情があると言われても、その事情を知りたいのは自分の方だと、吉乃は琥珀に問いたくなった。
「咲耶様も仰っておりましたが、これからなにか気になることがあれば、いつでも僕に聞いてください。吉乃さんはたった今からうちで預かることが決まりましたし、楼主として答えられることには、すべてお答えしますので」
黒い猫耳をピンと立てた琥珀が言う。
聞きたいことは山ほどあるが、本当に尋ねていいのか吉乃は迷いながら手を挙げた。
「あ、あの……。では早速、よろしいでしょうか」
「はい、なんでしょう」
「私は本当にここに置いていただいてもいいのですか? まさか私が、帝都吉原一の大見世・紅天楼の遊女になるだなんて想像もしていなかったものですから」
言い終えて、吉乃はつい足元に視線を落とした。
吉乃はまさか自分が紅天楼の遊女になるとは思ってもみなかったのだ。