「お前は、俺の花嫁だ。俺は遊女となる吉乃を、命を賭して護ると誓う」

「咲耶さんが、遊女の私を護る?」

「ああ。帝都吉原にお前がいる限りは、俺は近くにいられるからな。吉乃がここにいる間、俺はお前をどんな危険からも護ると誓おう」


その言葉に、今度こそ嘘偽りはないように思えた。

思わずゴクリと喉を鳴らした吉乃は胸の前で握りしめた手に力を込めて、咲耶の真っすぐな視線を受け止めた。


「いいか、吉乃。ここ、帝都吉原では異能持ちの女は他の遊女たちよりも、多くの人ならざる者たちを惹きつけてしまう。お前が危険な目に遭うことは避けられないだろう。だが、大門をくぐった以上、ここから逃げ出すことも叶わない」


遊女はまるで、籠の中の鳥だ。

羽根を切られて飛ぶことを許されず、自由と尊厳を奪われ、この地に縛り付けられた、悲運の鳥。

その中でも吉乃は特に、色眼鏡で見られるということだろう。

現世でも常に好奇の目にさらされてきたが、ここでも同じような扱いを受ける可能性があるということに吉乃は不安を覚えずにはいられなかった。