「俺とお前を結ぶ縁は、数百年の時を経るうちに、歪んでしまったのかもしれない」
「私と咲耶さんを結ぶ縁が歪んでしまった? どういうことですか?」
「今の俺も、この地に縛り付けられた〝呪われた身〟だ。だから、ここから離れることは許されない宿命を負っている……というのは、問いの答えになっていないな」
そこまで言った咲耶は曖昧な笑みを浮かべた。
対して、意味を理解できずにいる吉乃は首を傾げるばかりだ。
「それでも、これだけはわかっていてほしい。俺は、お前に巡り会える日を願い続けてきた。だから俺はもう二度と、お前を離したくはない――いや、絶対に離さない」
「え……」
情熱的な言葉に、吉乃の胸の鼓動が大きく跳ねた。
「それと吉乃は今、自分に備わっている力はとても恐ろしいものだと言ったな。大蜘蛛に、そう言われたからだと」
「……はい」
「大丈夫だ。吉乃の異能は……涙は、決して恐ろしいものなどではない。吉乃は不遇な扱いを受け続けてもなお、その魂を穢すことはなかった。美しい魂を持つ者が流す涙は、当然美しいに決まっている。だから吉乃は、なにも心配しなくていい」
穏やかだが力強い声。その言葉を聞いた吉乃の胸には熱いものが込み上げた。