「だから、私は……」

「――吉乃、すまない」

「え……?」

「お前は……お前たち一族は、俺のせいで長い間苦しんでいたのだな」


そのとき、不意に口を開いた咲耶が吉乃の言葉を止めた。

ハッとして振り向いた吉乃は自分を見る咲耶の切なげな表情に気付くと、思わず目を瞬いた。


「俺の身勝手な願いのせいで、お前たちを苦しめることになってしまって、本当にすまない」


咲耶の頬に、桜の花びらが舞い落ちる。

それはまるで、咲耶が流した涙のようにも見えて――、

(どうして、咲耶さんが謝るの?)

吉乃の心は、身を切るような切なさに覆われた。