「私は五歳の頃に事故で両親を亡くして以降、十七になるまで養父母に育てられました。でも、私と養父母の間には血縁関係はなく、養父母は私が生まれた村で私の両親と一番年齢が近くて実子がいないという理由だけで、育ての親に選ばれたそうです」


吉乃を育てた養父母いわく、選んだのは当時の村長ということだ。

それについて養父母はよく、『貧乏くじを引かされた』と不平不満を述べていた。


「養父母は私に必要最低限の暮らしと教育環境だけは与えてくれましたが、それらはすべて遊女の適齢期――十八になる直前に、私を帝都吉原に売るためだったのです」


当然、養父母に愛された記憶などない。

それどころか吉乃は養父母のみならず、村人たちからも厄介者として扱われていた。


「みんなが私を疎んでいたのは、私が人なのに薄紅色の瞳を持って生まれたからだけではありません。私が、呪われた一族の生き残りだったからなんです」


木花村の、呪われた一族。

しかし村人は誰も、なぜ吉乃たち一族がそう言われるのか、理由を教えてはくれなかった。