「実は吉乃は、俺がかつてあった地の――」
「私は……咲耶さんの花嫁にはふさわしくない人間です」
「……なんだと?」
「なぜなら私は、現世で〝呪われた一族の娘〟だと言われていたからです」
咲耶の声を遮った吉乃は、ゆっくりと顔を上げた。
言いかけた言葉を止めた咲耶は驚いたように目を見開くと、数秒沈黙した後、吉乃の言葉の真意を尋ねた。
「吉乃が呪われた一族の娘とは、どういうことだ?」
咲耶の問いに、吉乃はそっとまつ毛を伏せる。
吉乃が思い出すのは現世で自分に向けられてきた蔑みの目と、心無い言葉たちだ。
「私も、私の両親も……。故郷の村では呪われた一族だと言われて、ずっと疎まれていたんです」
吉乃が生まれ育ったのは、日本の片田舎にある閉鎖的な村だった。
周囲を山々に囲まれたそこは木花村と呼ばれ、川のせせらぎが耳を癒やす、自然豊かな土地でもあった。