「え──」
すると次の瞬間、辺りの景色が一変する。
それまで吉乃が見ていた帝都吉原の風景は消え、目の前に美しい参道が現れた。
「ど、どうして……?」
石畳の参道の先には、豪壮な武家屋敷らしきものが建っている。
屋敷の前には一本の桜の木があり、空に向かって大きく枝を広げていた。
「あれが俺の屋敷だ。この場所は普段は神力で隠されていて、俺の許可なしでは誰も入ってこられないようになっている」
後ろを振り向くと、そこには先ほどくぐった白い鳥居が建っていた。
つまり、鳥居が門の役割をしているということか。
あまりの不思議な体験に驚いた吉乃は、迷子になった子供のように、隣に立つ咲耶を見上げた。