「怪我をしているものはなく、大蜘蛛の部下たちも念のため全員捕縛いたしました」
「ご苦労。このあとお前たちは、女たちをそれぞれの見世に送り届けてから事後処理にあたれ。俺はこれから、こちらの女の事情聴取を行う」
「わかりました!」
(え……?)
咲耶に命令された男は、すぐに持ち場へと戻っていった。
残された吉乃は未だに恐怖に怯える瞳で、恐る恐る咲耶を見上げた。
「あ、あの、事情聴取って……」
「言葉の通りだ。先ほども言ったように、お前にはまだ聞きたいことがある。とりあえず、場所を変えるぞ」
そうして咲耶は吉乃の後ろにまわり込むと、吉乃の手を縛っていた縄を切った。
数時間ぶりに腕が解放されて安堵するべきなのに、咲耶の変貌を目の当たりにした吉乃は事情聴取という言葉に不安を抱き、咲耶の顔を見ることができなかった。
「腕が痛むか?」
そんな吉乃に、咲耶が優しく問いかける。
「い、いえ……大丈夫です」
顔を上げた吉乃は、慌てて首を左右に振った。