「い、いえ、私は――」
「色々と言い訳を重ねるのは結構だが、帝都内で争いごとを招いたものは有無を言わさず〝神威〟に粛清される。それはお前も、よくわかっているだろう?」
神威──。今、咲耶は確かにそう言った。
神威とは、現世でいう警察組織だ。その名は畏怖の対象で、彼らは帝都の秩序を護るためなら手段を選ばぬ軍隊として有名だった。
(まさか、咲耶さんは神威の人なの?)
「貴様はここで長く遊女の案内人を務めていたというのに、とても残念だ」
そこまで言うと咲耶は徐に、腰に差している刀の柄に手を添えた。
と、その瞬間、それまで綺麗な薄紅色だった咲耶の髪が闇色へと変わりはじめる。
瞳の色も漆黒だったのに、燃えるような紅色に変化した。
(な、なんで──?)
吉乃は咲耶から目が離せなくなった。
それは決して良い意味ではなく、あまりの恐怖に身動きが取れなくなってしまったのだ。