「……なるほど。そういうことか」

「え?」

「先ほどの毅然(きぜん)とした物言いも、その身に受け継がれた清らかな魂あってのことだったのだな」


予想外の微笑みと言葉を向けられた吉乃は、思わずキョトンとして固まった。

(私の身に受け継がれた清らかな魂って……?)

一体、どういうことだろう。


「吉乃という名も、薄紅色の瞳を持つお前によく似合っている」

「あ、あの、あなたは……」

「俺の名は、咲耶(さくや)という」

「咲耶、さま?」

「お前は、俺の名を呼ぶのに〝様〟などつけなくともよい」

「では……咲耶さん、とお呼びしても?」

「ああ。お前に名を呼ばれると心地が良いのも、俺たちを繋ぐ〝(えにし)〟故か」


白い軍服をまとった美しい男――咲耶はそう言うと、再び柔らかに目を細めた。

対する吉乃はなんと返事をしたらいいのかわからず固まってしまった。

(私に名前を呼ばれると心地が良いとか、私たちを繋ぐ縁ってなんのこと?)