「ずっと、お前を探していた。俺の花嫁」 低く艶(つや)のある声に導かれ、女は静かに振り返る。 空に向かって大きく枝を広げる桜の木の下には、白い軍服をまとった眉目秀麗な男が立っていた。 「あなたは――」 漆黒の瞳は一途に、女へと向けられている。 さらりと風に流れた銀色の髪は毛先に向かうにつれ薄紅色に染まっていて、陽に透ける度に色濃くなった。