「吉乃の気持ちはよくわかった。――琥珀。今回だけの特例として、このふたりの処遇はお前に任せることとしよう」
「よ、よろしいのですか!?」
「ああ。琥珀も最初に、〝裏切り者に関しましては、楼主である僕が責任を持って対処いたします〟と言っていたことだしな。それと……蛭沼の件で鈴音に貸しを作っていた分も、これで清算とさせてもらおう」
咲耶の言葉を聞いた鈴音は「もちろんです!」と答えた後、再び白雪の身体を強く抱きしめた。
そうして咲耶のその言葉の通り、ふたりの処遇は琥珀に一任され、その場で粛清されることは免れた。
「吉乃、これで納得したか?」
「はい……! 咲耶さん、本当に本当に、ありがとうございます……!」
ふわりと、吉乃の顔に笑顔の花が咲く。
初めてハッキリと笑顔を見せた吉乃を、咲耶は愛おしげに見つめていた。
「――今回のことで俄然、吉乃の水揚げが楽しみになってきたな」
しかし、そんなふたりを見ながら禅が、小さく笑う。
吉乃の水揚げまで……あと二週間を切っていた。