「さぁて、あの女は、どこの見世(みせ)の所属になるかね」


見張り役のひとりが、面白そうに目を細める。

彼らの視線の先には身体検査を受ける、人の女がいた。

人の女たちは帝都吉原に売られてきたら、まずは案内所で特殊な身体検査を受け、人ならざる者から奉公先の見世を言い渡される決まりになっている。

健康的で知的かつ、優れた容姿をした女は帝都吉原でも格式高い大見世(おおみせ)へ。

その下は中見世(なかみせ)小見世(こみせ)とあり、最下級の遊女屋・切見世(きりみせ)に送られる場合もあると、吉乃は自分を売った養父母から教えられていた。


「ふむふむぅ〜。お前さんは、小見世の〝豆がら屋〟の所属に決まりですなぁ」


吉乃の前に立っていた女が所属の見世を言い渡された。

ハッとして顔を上げた吉乃は、肩を落として戻ってくる女を、ついまじまじと見つめてしまった。

(え……この子が、小見世なの?)

吉乃が見た女の顔は、この場にいる誰よりも整っているように思えた。

いわゆる器量良しなのに小見世行きとは、一体どういうことだろう。