「好きだし……」
あの言葉はあのキスの意味は何だったのかな。
訊くのが怖くて結局訊けないまま。
でも──
「昨日はごめん」
謝られたんだから。
涼にとってはなかったことにしたかったのかも。
ちょっとだけ嬉しかったのはここだけの話。
私たちもしかしたら……なんて考えてもしょうがない。
私は姉として涼の傍にいることができる。
だから、これでいい。これでいいんだ。
「雨、止まないね」
初めてふたりで行くショッピングの帰り道。
春くんの傘の中にいれてもらいながらふたりで歩いていた。
「……そうだね」
予報では降るって言ってなかったのにな。
それは涼と初めて会った日のことを思い出すような雨で思わず苦笑してしまう。
「あ、桜ちゃん! お参りしていこうよ!」
春くんが葵ちゃんの家である神社を指す。
ちょうど涼の幸せを願いにいこうと思ってたから元気に頷く。
「うん!」
「前来た時、涼が自分の想いを諦めませんように、って願ったんだ」
「そうなの? 涼のためにありがとね!」
そう言って、ふたりで手を合わせた。
涼は、自分の想いを口に出せたのかな?
私の想いは叶わなかったけど、姉として涼の幸せをいつまでも願っているから。
「あのさ、涼からふたりで行ってきなよって文化祭の招待状もらったんだけど……」
春くんがじゃーんと紙を見せてくれた。
それはゆずちゃんがくれた招待状だ。
そっか。これが涼の出した答えなんだね。
「うん! 一緒に行こ!」
これからの未来のことを考えながらふたりで仲良く手を繋いで家へと帰る道を辿る。
あの日、私が涼に傘を渡した日からたぶんわかっていた。
この人のこといつか好きになるって。
でも、もう前を向かないと。
さよなら、そしてありがとう。
私の初恋。
自分にしか聞こえない声でそっと呟くと、雨は止み、空は次第に晴れていき虹がかかった。
四つ葉のクローバーの花言葉
『幸福』『私のものになって』