「桜ちゃん、まだ帰らないでいいの?」
「うん。もうちょっとだけ」
春くんに付き添ってもらって、四つ葉のクローバーを探しにきた。
でも、そう簡単に見つかるはずはなくて。
もうすぐ日が落ちようとしていた。
「……誰かにプレゼント?」
「そう」
「好きな人?」
好きな人か。
直接 "好き" という言葉はいえないけど。
「……まぁ」
「あのさ、俺は桜ちゃんのことす……」
春くんが何かをいいかけてたけど、それより四つ葉のクローバーを見つけた方に驚いて最後まできけなかった。
「あったー!」
ちゃんと四つ葉だ。
三つ葉じゃ違う意味になってしまうから見つかってよかった。
「え、ほんと?」
「うん。これ!」
「おめでとう!」
四つ葉のクローバーを見せると、自分のことのように喜んでくれた。
他人の喜びも心から喜べる春くんは素敵な人だ。
「そういえば、さっきなんか言いかけたよね?」
「あ、えっと、なんでもない! 帰ろっか」
「そうだね」
帰り際、春くんが少し元気なさそうに見えた。