「はじめまして、ではないけど。姉になる(さくら)です。これからよろしくね!」

「……うん」

 はじめての顔合わせのとき、笑顔で手を差し出すと少し気まずそうなきみ。

 ひとりっ子の私はずっと弟や妹がいる友達が羨ましかった。
 だから、弟ができるって聞いたときはうれしくてしょうがなかった。

 でも、違った。姉弟じゃなかったらよかったのに。




「彼氏とかつくらないの?」

 お母さんとふたりでミルクティーを飲みながらおしゃべりをしていると、唐突に訊かれる。

「……好きな人ならいるけど」

 頭の中にはある人が思い浮かぶ。
 でも、それはお母さんには絶対に言えない人だ。

「ふーん。好きな人ってまさか(りょう)くんじゃないでしょうね?」

 いきなりそんなこと言うから、カップを落としそうになった。

「……な、なに言ってるの? 涼は弟じゃない」

 うん。弟だよ。
 自分にだって思いっきり言い聞かせる。

「そう。信頼してるからね」

 お母さんは私たちが恋愛関係になってほしくない。
 まぁ、当たり前だよね。
 義理とはいえ、姉弟なのだから。
 自分たちとは同じふうにはなってほしくないらしい。

 大丈夫だよ、お母さん。
 私はちゃんとお姉ちゃんとして接するから。
 恋愛関係にならないように努力はする。