外を出ると久しぶりに雨が降っていた。
そして、俺の目の前には、手を繋いで登校しようとする義姉と親友。
文化祭だって春樹と桜で行けばいいじゃん!
あ、なんでそんなこと思いつかなかったのだろう。
いや、思いつきたくなかった。
俺は邪魔者だし、ひとりで学校に行くことになるんだろうな、と思ってるとふたりがこっちを見る。
「涼も一緒に行くぞ」
「え、俺も? お邪魔じゃん」
「涼は私の弟なんだから! いーの!」
「それに俺の親友だし!」
素直に嬉しいと思った。
このふたりが付き合ったら春樹とはもう学校一緒に行けないと思っていたから。
立ち止まって少し考える。
家族の幸せは俺の幸せだ。
親友の幸せも俺の幸せ。
そうだ。よかったんだ、これで。
桜が選んだ人が他の知らないだれかじゃなくて俺の大切な親友で。
あいつなら任せれる。信頼できる。
そして何より俺の大切なふたりが笑っているから。
「どうしたの?」
「涼、はやく!」
ふたりが不思議そうにこっちを向く。
あのとき、言えなかった言葉が今なら言える気がする。
「桜、春樹。おめでとう!」
桜と初めてあったときのような雨の中、声を振り絞って伝えた。
すると、ふたりはまるで雨が止んだときに見える虹のような温かく眩しい笑顔を浮かべてくれた。
あの日言えなかった言葉を言えた俺は、初恋を胸に抱いてこれから前を向いて歩いて行けるような気がした。
また恋ができるように、まただれかを好きになれる日がくるように。
さよなら、そしてありがとう。
俺の初恋。
そう小さく呟いたとき、空はどしゃぶりの雨なはずなのに、俺の心は晴天だった。