「みて、この俳優さん! 私が好きな人!」
好きか……。
自分の想いはもう叶わないし届かなくても言わないと。
告白するって決意したんだ。諦めないって。
言うだけならいいよな。
想いを返せなんて言わないから。
「あのさ、俺、桜のこと……」
好き。
たったその2文字が喉の奥まで出てきたのに飲み込んでしまった。
俺はずっと臆病だな。
「涼。私は涼のこと好きだよ!」
「……えっ!」
いきなりのことで声が家中に響いてしまった。
「姉弟としてね」
「……俺も桜のこと好き」
姉弟としてじゃなく、ひとりの人として好きだったよ。
頑張るから。
ただの姉弟に戻れるように。
「好きだよ」
改めて想いを伝える。
これが桜の瞳にどう映ったのかはわからない。
「うん。私は涼に出逢えてよかったよ」
「俺も」
出逢えてよかった。
きっと姉弟じゃなかったらこんな風に笑えていなかったと思うから。
桜の笑顔に安心する。
「あ、そういえば!」
桜が何かを思い出したように大きな声を出す。
「今度ゆずちゃんの学校で文化祭あるんだけど……涼も来ないかって?」
「……考えとく」
すぐに、答えは出せなかった。
一緒に行けば春樹に悪いし、行かないならゆずちゃんに悪いしな。