あのあと、すぐ春樹から電話がかかってきた。

「俺、桜ちゃんと付き合えることになった!」

 報告してくるだろうと思ってたけど、きついな。

 何も言えない。
 おめでとうって言わないといけないのに。
 もうほんとに諦めないといけない。
 そう思うと涙が零れそうになった。

(りょう)? 聞いてる?」

「……聞いてる」

「もしかして泣いてる?」

「……泣いてる」

「えっ、なんで?」

 俺がそんなこと言わないと思ったのか、電話越しでびっくりしたような声が響く。

「……やっと春樹の気持ちが桜に届いたことがうれしくてさ!」

 声震えてないだろうか。

 嘘は言ってない。これも俺の本心だ。
 ずっと春樹のこと見てきたからこそ桜を振り向かせてほしかった。
 でも、俺の届かない想いはどこに捨てればいいんだろう。
 俺はどうすればいいのだろう。