昨日のことがあって、全然寝れなかった。
 まだ朝の4時だ。
 誰もいないだろうキッチンへ行くと桜の姿がある。

「はやっ、なんで?」

「ちょっと眠れなくて本読んでたら朝だった」

 あはは、なんて笑う桜の目は少し腫れているように見えた。
 そんなに泣ける本だったのか?

「そこまで夢中になってたのかよ」

「まぁね。涼にも貸してあげるよ」

「いいよ。小説は読むの苦手だし」

「……」

「……」

 沈黙が続く。



「昨日はごめん」

 桜は知らないけど、謝りたかった。
 勝手にあんなことしたことを。
 自分でも、最低だと思う。
 桜がもし起きていたら気持ち悪いと思われていただろう。

「……なにが?」

「なんでもない」

 首を横にふって、桜の隣へといこうとする。
 すると、逃げるかのように階段のほうに歩いていった。

「……私、もう部屋戻るね。なんだか眠たくなっちゃった」

「うん。俺も寝る」

 今日は休日だし、昼過ぎまで寝ていても怒られないだろう。

「じゃあ、おやすみ」

「おやすみ」

 朝する会話じゃないな、と苦笑いしながらまた部屋に行きベッドに入り、瞼を閉じた。