「あれ、空いてる?」
家でひとりでいるのも暇で春樹の家に遊びに行って帰ってきた。
鍵をかけたはずなのに少し驚く。
ドアを開けると桜の靴があるからもう帰ってきてることがわかった。
「桜?」
そう声をかけたが、桜はソファーで寝息をたてて眠っていた。
珍しく早起きなんかするからだろ。
隣町まで出かけて。
そんなに好きなのかよ、その人のこと。
俺の方が絶対桜のことよく知ってる。
俺の方がずっと近くで見てきた。
俺の方が──
「好きだし……」
気づいたら眠っている桜に自分の唇を重ねていた。
ハッとして急いで自分の部屋へ上がる。
俺はなんてことを!
自分がしたことの後悔でいっぱいいっぱいで桜がほんとは起きてたなんて気づけなかった。