普段、全く読まない本を取り出す。
それは、俺のお母さんがくれた最後の贈り物だった。
小説には興味なかったけど、お母さんのいちばん好きな本だったから捨てずに取ってある。
その中には四つ葉のクローバーの栞が挟まれている。
少し前に桜が俺の誕生日にくれたものだ。
「涼。お誕生日おめでとう」
「四つ葉のクローバー?」
「そう。これが私の気持ちだから。探すの大変だったんだよ!」
私の気持ちってどういうことだろう。
四つ葉のクローバーは幸運という意味だから──
「俺に幸せになってほしいってこと?」
「……そう。私の大事な弟だからね」
それだけ言って部屋を出ていった。
なんだろう。
桜の表情が少し悲しそうにも見えたのは俺の勘違いだっただろうか。