「やば、時間ない!」

 そう叫びながら桜が2階から降りてくる。
 まだ6時前なのに珍しく早起きだ。

 その姿はいつもよりおしゃれでまるで誰かとデートにでも行くような服だった。

「どこか行くの?」

「あ、涼。隣町にデート的な?」

「は?」

 自分の考えが当たって思わず声が出た。


「ねぇ、涼。この服おかしくないかな?」

「いーんじゃない?」

 目線はさっきまで見ていた漫画に映しながら言う。
 でも、その漫画の内容は全然入ってこない。

「もうちゃんと見てよ!」

「……てか、時間いいの?」

「えっ? あ! もう行かないと!」

 洗面台の方へと駆けていき、またリビングへぱたぱたと戻ってきた。


「じゃあ行ってくるね! どこか出かけるときは鍵をかけてから行くんだよ」

「はいはい」

 はぁ……。
 最後まで慌ただしく出ていった桜を見送りひとつ溜息を溢した。