「どうだった?」
そう訊いてくる春樹は真剣な顔をしていた。
「好きな人がいるかは教えてくれなかった」
「そっか。でも、ありがとう」
「……うん」
春樹に頼まれていたことを昨日、桜に訊いてみた。
「好きな人は……いるようないないような?」
曖昧な答えで誤魔化されたような感じがする。
「なにそれ。じゃあ春樹のことはどう思う?」
「……春くん? いい子だし、かっこいいとは思うよ?」
このことは伝えなかった。
これを話したら、春樹はきっとすぐ告白する! とか言い出すだろう。
でも、もう少しだけでいいから、独り占めさせて。
応援したいけどしたくない複雑な気持ちがずっとあって自分でもよくわからない気持ちだった。
「涼はいいよな。桜ちゃんみたいなかわいくて優しいお姉ちゃんがいて」
じゃあ代わってよ。
好きで姉弟になったわけじゃない。
もっと違う関係になりたかった。
「姉弟だったら付き合ったりできないからな?」
「あ、そうだ!」
今頃気付いたみたいだ。
春樹はやっぱり短絡的だ。