「桜ちゃんだ!」

 窓の外を見て春樹(はるき)が嬉しそうな顔をする。
 それから、大きく手を振った。
 遠いし気づかないだろ、そう思いながら俺も窓の外を見る。

「あ、気づいてくれた」

 すごくニヤけてる。
 そんな春樹に俺はため息をつきながら言う。

「もうさっさと告白すればいいじゃん」

 そうすれば俺は少しは楽になれるかもしれない。
 いや、もっと辛くなるだろうか。

「なぁ、協力してくれよ! ひとりじゃ無理!」

「……俺が弟だから?」

「違う! 親友として頼んでんの!」

 今度は真剣な顔をして言ってきた。

 こういうとこなんだよな。春樹のいいところ。
 俺が弟だから協力して、というのは前にもあった。
 でも、春樹は俺が好きな人の弟だから近づいてるわけじゃない。
 あくまで親友として。

 我ながらいい親友をもてたと思う。