売れない作家・結城正人。今日もパソコンに向かって原稿をしたためています。

ぱちぱちとキーを叩く音が響く室内で、スマホの着信音が鳴る。メッセージを確認すると、編集担当の川野さんからの進捗伺いだった。

――「頑張っています。今、４割ほどです」
――『分かりました。何かお困りのことがあったらご連絡ください』

デビューしてからついてもらった川野さんには、頭が上がらない。冴えない男だったので、女性と接する機会も少なく、そんな中で川野さんは出来の悪い正人にやさしくしてくれるありがたい担当さんだ。

――「ありがとうございます。なにかあったら、よろしくお願いします」

そう返事を打って、再びパソコンに向き合う。ああでも、今日は疲れた。これで１２時間パソコンと向き合いっぱなしだった。目も疲れてきたし、今日は寝るかと、アラームを掛けて布団に入った。睡魔は直ぐに訪れた。