「それに、遊女が使う衣装や布団などは自腹だ。五千圓からそうしたものがどんどん引かれていく。まあ、五千圓とは破格だから、他の遊女よりは残るだろうがね」
遠くを見つめたまま顔色ひとつ変えずに淡々と話す彼は、吉原にはくわしそうだ。
よく遊んでいるのだろうか。
私は自分の考えが浅はかだったと反省していた。
「そう、でしたか」
「女衒たちがそのような話を最初に明かすわけがないし、大概は、遊郭に入ってから受け取る金の少なさに愕然とするものだ。しかし後悔してももう遅い。あの大門をくぐったあとなのだからね」
話し終えたところで車夫を止めた津田さまは、背広の内ポケットからお金を取り出し、車夫に渡す。
「そこであんぱんをひとつ買ってきてくれ」
あんぱん? 好きなのかしら。
朝早いため商店のほとんどが閉まっていたが、甘い香りが漂ってくるあんぱん屋だけはのれんが下がっていた。
遠くを見つめたまま顔色ひとつ変えずに淡々と話す彼は、吉原にはくわしそうだ。
よく遊んでいるのだろうか。
私は自分の考えが浅はかだったと反省していた。
「そう、でしたか」
「女衒たちがそのような話を最初に明かすわけがないし、大概は、遊郭に入ってから受け取る金の少なさに愕然とするものだ。しかし後悔してももう遅い。あの大門をくぐったあとなのだからね」
話し終えたところで車夫を止めた津田さまは、背広の内ポケットからお金を取り出し、車夫に渡す。
「そこであんぱんをひとつ買ってきてくれ」
あんぱん? 好きなのかしら。
朝早いため商店のほとんどが閉まっていたが、甘い香りが漂ってくるあんぱん屋だけはのれんが下がっていた。