「これから交渉に行くんですよ。家柄をご存じならば話は早い。この女、齢は十七。言い分なしの玉ですぜ。この歳なら、留袖新造(とめそでしんぞう)としてすぐに客を取れるでしょう。どうです、旦那。最初の男にはなりませぬか?」


女衒の生々しい発言に、頬がピクリと動いてしまう。

つまり、津田という男に私のひとり目の客になれと言っているのだ。


「ほぉ。それでお前は郁子をいくらで売る気だ?」

「こちら、子爵令嬢でこの美貌。教養ありとかなりの上玉ですから……五千圓は固いと」

「それは、遊女としては破格だな」


五千圓といえば、大学を卒業して働き始めた者の十年分に近い稼ぎに匹敵する。

まあ、このようなきちんとした身なりをした男なら、すぐに稼ぐ額ではあろうけど。

それでも父はこのお金があれば、三谷家を再興できるだろう。


「これだけの器量よしですから」