とっさに答えられず黙り込むと、図星だと解釈されたようだ。


「……そうか。どうりで遊女に身を落とすとは思えぬ上質な着物を纏っていたんだな」
「えっ?」


たしかにこの着物は、色目は地味だが五年ほど前に購入した上等な紬だ。
しかし、それをひと目で見抜くとは、この男は何者なのだろう。


「すまん。私は津田(つだ)敏正(としまさ)という。それでは郁子」


いきなり呼び捨てにされて驚愕したが、この身なりや着物の知識から、成金か身分の高い男なのだろうから仕方がないと話を聞くことにした。


「まだ妓楼には属していないのだな」


質問の意図がわからず首を傾げていると、女衒が口を開く。