「はい。昨晩は、輸出入に関わっている政府要人の、いわば接待でお供しただけです。敏正さんは女を金で買うなんてもってのほかだと思っていますからね。それでも仕事ですから、相手が望めば行くしかありません」
「え……」


接待だったの?そうとは知らずに軽蔑の眼差しで見てしまったわ。


「昨晩は、私とふたりで雑魚寝(ざこね)でしたよ。あっ、もちろん私たちはそういう関係ではありませんので誤解なきよう」


クスクス笑う一橋さんを前に、頬が赤らむのを感じる。


「敏正さんはまだ見習いのような立場で、社長のそばで仕事を覚えている最中です。そのため役職についてはいらっしゃいませんが、すでに事業の方針などに口を挟まれています。社長が幼い頃から仕事を見せてこられたおかげでしょう。三谷家の件に関しても知恵を絞られるはずです。ですから、もう肩の荷を下ろしてくださいね。それでは」