「妹や弟は寂しい思いばかりしています。せめて学校で友人たちと楽しむ時間は残してあげたくて。ですので、敏正さんがお金を出してくださるのは本当に助かります。でも、母をご存じだというだけで出していただける額ではないのではありませんか?」


五千圓は大金すぎる。


「さすがに五千圓を即決したとなれば父に大目玉を食らうだろうが、後悔はない。郁子が助けられて当然と思うような傲慢な人間であれば、失敗したと感じたかもしれないが、自分で膳を運ぶような女だし」


まさか、助けられて当然だなんて思うわけがない。
ただ、女学校にはなんでもしてもらって然りと、甲斐甲斐しく働くお付きの人に文句ばかりぶつける学友もいたなと思い出した。