「そして、吉原を出る最後の方法は」


彼は一瞬言いよどみ、眉根に深いしわを刻む。


「死だ」
「死?」
「遊女は、年季が明ける前に病に倒れて死ぬ者がかなりいる。間夫と駆け落ちしようとする遊女もあとを絶たないが、間違いなく捕らえられて折檻され、亡くなることも多い。死体としてなら、吉原を出られる」


全身に鳥肌が立ち、動揺を隠せない。
必死に働けば数年で借金を返済できて、また元通りの生活が送れるものだと思い込んでいた私が浅はかだった。
あまりにも世間を知らなさすぎた。


「一旦足を踏み入れたら、この三つしか出る方法がない場所だ」


冷静に告げる敏正さんは、私の目をまっすぐに見つめて心の中を探るかのように視線をそらさない。


「考え足らずでした。助けていただき、ありがとうございました」


私は畳に額をこすりつけてお礼を口にする。