「郁子が言う通り、ひと晩で百五十圓ほど稼ぐ花魁(おいらん)も中にはいる。だが、衣装、自分付の新造や禿(かむろ)の世話をするための金も、みずからの稼ぎで捻出しなければならない。だから、新たな借金を重ねるのも珍しくない世界だ。おまけに女衒から受け取った金は借金だ。利子が高すぎて年季が明けるまでに返せない者はいくらでもいる」
「えっ……」


新たな借金?
年季が明けるまでに返せない?

懸命に働けば、年季明けを待たずして吉原から出られると思い込んでいた私には衝撃だった。


「そのため、吉原から出たあとは下級遊女に身を落とす者も珍しくない」
「そんな……」


吉原から出ても、まだ遊女として働くの?
唖然としていると難しい顔をした彼は続ける。


「一旦吉原に足を踏み入れた女が出る方法は三つしかないが、知っているか?」