「うん。まずは腹ごしらえをしよう。食べなさい」
「はい。いただきます」
三谷の家にいた頃のように背筋を伸ばして手を合わせる。
そして、箸を手にした。
「おいしい」
豆腐の味噌汁は優しい味だった。
食事をゆっくり味わえたのは久しぶりだ。
三谷家に借金取りがひっきりなしに訪れるようになってからは、なにを食べても味がせず、すぐに自室に引っ込んでいたからだ。
「そうか。よかった」
同じように味噌汁を口にする敏正さんは、頬を緩めて食べ進める。
夢中で食べ終わると、すでに彼の器は空になっていて、私をじっと見ていた。
「なにか?」
「さすが三谷家令嬢だ。所作に抜かりがない」
「えっ。あまり見ないでいただけると……」
そんな観察をされていたとは知らず、たじろぐ。
「俺は褒めているんだぞ。これだけの礼儀作法が身についていれば、五千圓というのもうなずける」
「はい。いただきます」
三谷の家にいた頃のように背筋を伸ばして手を合わせる。
そして、箸を手にした。
「おいしい」
豆腐の味噌汁は優しい味だった。
食事をゆっくり味わえたのは久しぶりだ。
三谷家に借金取りがひっきりなしに訪れるようになってからは、なにを食べても味がせず、すぐに自室に引っ込んでいたからだ。
「そうか。よかった」
同じように味噌汁を口にする敏正さんは、頬を緩めて食べ進める。
夢中で食べ終わると、すでに彼の器は空になっていて、私をじっと見ていた。
「なにか?」
「さすが三谷家令嬢だ。所作に抜かりがない」
「えっ。あまり見ないでいただけると……」
そんな観察をされていたとは知らず、たじろぐ。
「俺は褒めているんだぞ。これだけの礼儀作法が身についていれば、五千圓というのもうなずける」