三谷家もそうで、絨毯を敷き詰めた客間が自慢だった。
けれども私は、慣れ親しんだ畳の部屋が好きなのだ。


「物好きだな」
「私が物好きでしたら、敏正さまもですね」


そう口にすると、彼は私をじっと見つめる。

しまった。失礼な発言だったかしら。

焦ったものの、彼がふと表情を和らげたので怒っているわけではなさそうだ。


「座りなさい。それと、敏正さまも改まりすぎだ。せめて〝さん〟くらいにしてくれ。俺は、そんなたいそうな人間ではない」

「……はい。それでは、敏正さんと呼ばせていただきます」


私も郁子さまと呼ばれるのは好きではないので納得して、敏正さんの対面に置かれた箱膳の前に腰を下ろす。


「郁子とは嗜好が似ているようだ。ハナミズキもこの家も俺の自慢なのだ」


それを聞き、小さな喜びが胸に広がる。
気の合う人というのはなかなか見つかるものではないからだ。


「そうでしたか」