「なにを、とは? お手伝いです」


素直に答えると、紺絣の着物に着替えている津田さまは私をいぶかしげな目で見つめる。


「俺が金で買ったからか?」
「いえっ。私、こうしたことが好きで。いけませんでしたか?」


三谷家でもあまりいい顔はされなかったが、家計が苦しくなってきてから女中の数を減らしたため黙認されていた。


「いや、それならいいんだが。俺は郁子を女中にしたくて金を出したわけではない。それ、持ってこい」


それならどうして、五千圓ものお金をとっさに積んでくださったのかしら。

彼は私の分の箱膳をちらりと見て、指示を出してから戻っていく。私は慌てて続いた。

年季は入っているが美しく磨かれた飴色の廊下を歩いていくと、立派な日本庭園が広がっていて目を奪われる。

五月の今は、大きなハナミズキが白い花を咲かせていた。


「わぁ、ハナミズキ……」


足を止めて思わずつぶやく。