「はい。高等学校に在籍されている頃から経済や外国語を学ばれ、社長について社交界にも顔を出されていましたので、同じ歳の方よりは大人びていらっしゃいますね。本当にしっかりした方で、私も失礼ながら感心しているのですよ」


春江さんはご飯を盛りながら、自慢げに話を続ける。


「あの、郁子さまは敏正さまとどういうご関係で……。もしや、想い人でいらっしゃいますか?」
「あ……」


春江さんが目を輝かせて質問してくるので返答に困る。

まさか、今頃妓楼に売られていたはずの没落華族で、津田さまにお金で買われたとはとても言いだせない雰囲気だった。


「遅いと思ったら……。女は話が好きだな」


言いよどんでいると、背後から津田さまの声がしてビクッとする。


「申し訳ございません。すぐに」


春江さんは箱膳を整えて慌てて奥座敷に向かった。


「郁子はなにをしている?」